坂口博信に特別インタビュー!「ファイナルファンタジー」の産みの親が「FF14」にドハマりしたわけとは?

生みの親が"FFのテーマパーク"を満喫

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2021年9月、『FINAL FANTASY XIV』の全ユーザーたちは――新しい拡張パックの発売を待ちながら――Twitterでひとりの男の動向をチェックし始めていた。

『FINAL FANTASY』シリーズの産みの親である坂口博信氏が、FF14の舞台であるエオルゼアに降り立ったのである。

『新生エオルゼア』という最初のストーリーが発売されてから8年分のコンテンツの蓄積があるFF14を、坂口氏はなんとたったの5カ月でクリアしてしまった。本稿は、坂口博信氏をも魅了し、連日連夜PC画面の前に縛り付けるほどの魔力を持ったFF14を、ご本人の視点から自由に解説していただこうという企画である。

(インタビュアーは、シナリオライターの各務都心と、IGN JAPAN編集部のクラベ・エスラ。文字起こしと編集は各務都心が担当)

クラベ:『FINAL FANTASY XIV(以下、FF14)』をかなり短期間でプレイされて、もうクリアされていると。

坂口さん(以下、敬称略):9月27日から始めたのかな。ちょうど吉田さん対談があったので、相談してみたら「MMORPGは大変なので、プレイされなくてもいいですよ」って言われたんですよ。もともとMMORPGは大好きで、正直ハマるのは目に見えていたので、これはプレイしないでおこうかとも思ったのですが、でも、それでは吉田さんに失礼になるなと思い14の世界に入ることにしました。案の定ハマって、プレイ期間としてはちょうど5カ月。

クラベ :こんなにゲームにハマったのっていつぶりでしょうか?

坂口 :ていうか、こんなにゲームにハマっちゃダメですよね、仕事しなきゃいけないんだから(笑)。でも、ちょうど『FANTASIAN』の制作が終了したタイミングだったので、だいじょうぶだろう〜って自分を誤魔化しながら(笑)

坂口博信氏(ハワイの自宅より)

MMORPGにおける感動の瞬間

都心 :FF14をプレイして最初に感動したところはどこでしょうか? また、自身のキャリアを思い出した点があれば、お聞かせください。

坂口 :MMORPGを久々に遊んでみたら、案の定街は広いし、上級者がウロウロしていて皆強そうじゃないですか。そこにぽつんと一人で世界に入るあの孤独感ですよね。「俺、素手なんだけど(笑)」みたいな。あそこがまずは好きですね。リアルじゃないですか。知らない国に誰も頼りになる人がいないまま勉強しに行っちゃったような……そこには独特の気持ちの変化もあって、面白いですよね。

クラベ :過去にハマられたMMORPGって他にありますか?

坂口 :最初は『EverQuest』にとにかくハマって、当時のSQUARE SOFTのスタッフ十数名に強制的にやらせたんですよ。「これは知らなきゃいけないんだ」って言って。見事にほとんどのスタッフがハマって、それで『FINAL FANTASY XI』ができたんですよ。最初はやっぱり全然知らない世界なんで、どういう世界なのか、何が難しいのか、とにかく知ってみようってことでね。まあ、そのまんま出て来なくなっちゃったヤツもいますけどね(笑)

FF14の話に戻りますが、そのあと外に出て行って……最初のほうは敵がてんとう虫とかなんで特に何も感じなかったですけど、そのうち天野さんの描いたゴブリンが出てきたりとかしますよね。あと意外と皆気付かないんですけど、天野(喜孝)さんが初代『FINAL FANTASY』の時に描いたカメレオンもいるんですよ。一緒に冒険してる人に「これ天野さんのカメレオンだよ」って教えたら「え、そうなんですか?」って驚いてて。

カメレオンはCGのスタッフが天野(喜孝)さんの原画を元に上手くモデリングしてますよね。天野さんの絵って2D感たっぷりだから、あの雰囲気を保ったまま3Dにするって、結構大変なはずなんですよ。天野さんのゴブリンがなんで海岸にいるの?(笑)って思いましたけど。

クラベ :ファイナルファンタジーに対する深い理解が伝わってくる感じということですね。

坂口 :そうですね、スタッフの愛情を感じましたね。FF好きが作ってくれてるんだろうなと。

あとマイチョコボが手に入る瞬間ですね。最初は定期便しか乗れなかったのに、チョコボに乗って自分で操縦できた時は、『FINAL FANTASY Ⅲ』とか『FINAL FANTASY TACTICS』のオープニングを思い出しましたね。ディズニーランド的な抑制も効いてね。ディズニーランドってミッキーが同時に存在しないみたいな細かいルールを作っていて、ディズニーなりのリアルさをあの園内に持ち込んでいるじゃないですか。だから、FFのテーマパークとして楽しむためのルールが行き届いているところが楽しいですね。何でもかんでも詰め込むのではなくてね。

「RPG」と「ストーリー」が融合していく過程

坂口 :あと面白いなと思ったのは、いきなり僕が光の戦士で、主人公なんですよ。物語が流れ出すって今までのMMORPGでは有り得なかったことですね。何も持っていない孤独感から世界に入って、いきなりシナリオの波に乗ると『お前が主人公だ』って言われる。あれで上手い具合に独特の孤独感を、ストーリーという形で埋めてるというか、流れを作ってあげている感じなんですよね。

僕らが最初にFFを作ったときを思い出すと、その時のRPGって『Wizardry』とか、元を正せば『Dungeons & Dragons』とかですけど、そこには世界があって自分たちはそのなかで職業的なロールをこなすだけで、あんまりストーリーはなくて、ダンジョンに行くときの設定として存在するだけじゃないですか。だからそこにNPC同士の会話とか感情とかはないし、そういうものがRPGだと思ってたんですよ。

で、FFを作るに至って、どうやってRPGにストーリーを入れられるかって一生懸命試行錯誤して……RPGだけどストーリーとキャラクターがあるっていうのを最初からやって、ようやく『FINAL FANTASY IV』あたりから確立した感じなんですけど。

それがFF14をやったら、MMORPGで同じことをやっているんですよ。ストーリーと親和性のないはずのMMORPGで、がっつり『お前が主人公だ』って言われて。「あ、これって自分がFF1から4で苦労したことと一緒だ」って思って。だから根本的な構造がFFなんですよ、14は。

クラベ :僕もMMORPGではどうしても面白いストーリーができないという偏見があったんですが、あらゆる方面から「FF14はそこが上手く成功している珍しい例なんだ」と言われて。

坂口氏がメインて使用している暗黒騎士。

坂口 :もちろんストーリーそのものについては個々人で評価は分かれるでしょうけど、でもそれを皆がああだこうだ言うくらいストーリーが融合していること自体が凄いですよね。

都心 :ちなみに三国のどちらでスタートしましたか?

坂口 :ウルダハです。砂漠の街ですね。何しろあそこ広くて分かりづらくて(笑)はいはい、街を把握すればいいんでしょって歩き始めました。

運営型というスタイルについて

都心 :生みの親として見るFFと、ファンとして見るFFと、それぞれ違いはありましたか?

坂口 :生みの親としては、自分のキャラクターに実名を付けたというのもあって、皆が親切にしてくれますね(笑)「あー、FFの生みの親で良かったな」と思いましたね。すでにプレイする上でベースがあるというか。

クラベ :坂口さんのなかで実名を隠さないでいこうと思ったきっかけってありますか?

坂口 :昔ってゲームソフトにハガキが入っていて、それでファンレターが届くということがあって、そのなかの濃いファンなどはデバッガーとして入ってもらって製作チームの傍に置くとか、そんな交流があったんですよ。デジタルでもある程度交流はあるんですけど、ちょっと偏っているというか風潮に流されやすい部分がある。個々人の秘めた想いって聞けない気がしていたんですよね。

これがFF14に入ったら、たとえば「最近『FANTASIAN』をやりました」とか、もうダイレクトに話をしてくれるんですよ。これが楽しくて。向こうも最初は「緊張して、キーボードをたたく手が震えて打てません」って言うんですよ。「まあ落ち着いて、ゆっくり話そうよ(笑)」って返します。

都心 :なるほど(笑) 気持ちはわかります。では、それに対して、ファンとして見るFFではどうでしょうか?

坂口 :このゲーム自体どういう運営をしているかって考えるんですよね。僕は『TERRA BATTLE』というゲームを運営していた経験があるんですけど、後付けで足していくんで、全体の流れがシステマチックにならず、途中でいきなりコラボが入ったりとかシステムの改変があったりとかするんですよ。それが、FF14のシステムは全体が綺麗な波になっているんですよね。

しかも、現在も最新コンテンツが足されているわけですが、ユーザーが見抜いているというか、「次はこういうタイミングでこういうのが来るんですよ」って知ってるというのが、とても驚きました。ユーザーに新しいことを与えて驚かせるだけが運営であると思い込んでいたので。皆が次に何が来るのかを半分から三分の二近く予感しているほうが、安定して長期に渡って楽しめるという土台になっている気がして……ここは発明なのではと思いました。

都心 :プロデューサーレターライブなどで、早い段階で吉田さんがユーザーに伝えている部分ですね。

坂口 :そうですね。どうやら次にまた新式という装備が来るらしく、ここに合わせてクラフターになってその装備を作れば儲かるらしいぞという話になり、街中でトンテンカンテンやってるっていう。なんじゃこりゃって思ってたけど(笑) 今になったらわかりますが。その情報を皆が知っているっていうのが面白いですね。

ユーザーとの触れ合い

都心 :FF14の一番好きな拡張(新生、蒼天、紅蓮、漆黒、暁月)はどれでしょうか?

坂口 :僕は『漆黒のヴィランズ』に入った瞬間が一番痺れたかなあ。あそこで別世界に飛ばされるじゃないですか。今までは政治劇を同じ舞台でやっていて、登場人物も変わらないなあと思ってたんだけど、急に別世界に行くということで絶対に新しい出会いがあるじゃないですか。何しろ自然地形も違うはずじゃないですか。そういう時ってドキドキしますよね。で、漆黒は入ってみたら薄紫色の森に出ますよね。

都心 :レイクランドですね。

坂口 :ええ、あの景色がCG的にも素晴らしくて、マジに立ち止まりましたね。新世界来たぁって感じで。で、綺麗な森を堪能しながら初めての街に入ったら、なんとその街で仲間の皆が列になって待ってたんですよ! なんだNPCか? プレイヤーか? なんだこいつら? と思ってたらプレイヤーなんですよね。皆が花吹雪とかを散らしてくれて、これは何なんだろうと。感動しましたね。

都心 :僕もフリーカンパニーに入ってるんですけど、だいたいどのタイミングでフレンドが新しい街に入ったかがわかるので待機することはありますね。

坂口 :やってあげるんだ。なるほどね。

都心 :その流れでお聞きしますが、FF14内でユーザーとやりとりをしてきた中で、特に心に残っている体験は何でしょうか?

少女のキャラクターになることも……!

坂口 :これに関しては、MMORPGってある程度プライベートなことがわかるじゃないですか。「ああ、うちの猫が泣いてる」とか「うちの子が」とか。年齢もそこでわかってくるしね。だけど、あまり深いところまでは突っ込まないじゃないですか。微妙なプライベートがわかったままでの、新しい人間付き合いなんですよね。でもゲームコンテンツのことはがっつり話すわけですよ。「脚装備じゃなくて指輪からでしょ」「クリティカル上げなきゃ」とか。その不思議な会話ですよね。「寒くて手が動きません……」ってチャットに対して「すみません、ハワイは27です~」、みたいなね(笑)

クラベ :坂口さんが遊んでいる時、日本は深夜帯になるんですか?

坂口 :僕は昔犬を飼っていたのもあって、朝の5時か6時には起きるんですけど、そうすると日本は23時か24時。僕が起きるタイミングでちょうど皆もりあがってるくらいなので、合流して楽しめます。その後、徐々に人が減っていって最終的にはひとりになる。それがちょうどいいんですよ。「そろそろ一人でもプレイしたいな」っていうタイミングで抜けてくれるので、そこから5、6時間はソロプレイで楽しめる。

クラベ :そこから5,6時間ですか?

坂口 :あー、あんまり言うと怒られちゃうけど(笑) 大体一日で12時間はやってますね(笑)

クラベ :うわあ、すげえー。

坂口 :朝5時から夕方5時までやってます。そりゃ育つし、進みますよね(笑)

クラベ :今プレイ時間ってどれくらいなんですか?

坂口 :(手元で調べ始める)今ね、48日と9時間(1161時間)ですね。150日間で、丸々50日はFF14をやってるということですね。人生の1/3はFF14ってことになるのかな(笑)

都心 :僕も「暁月のフィナーレ」の長いメンテナンスの時に「入りたいなあ……」って思いましたね。

坂口 :やばいですよね、中毒(笑)

遊ぶ側、作る側

都心 :『FANTASIAN』を製作されているときに引退を考えたとおっしゃられておりましたが、FF14をプレイされて考えが変わった部分はありますか?

坂口 :このままFF14やり続けていいんじゃないかなと(笑)

クラベ :いやいや、ダメですよ(笑)

坂口 :おかげさまで話が2つくらい来ていて、まだ仕込みで、ビジネススキームを決めて契約……という段階なので具体的な製作には入っていないんですけど、何がしかやるとは思います。ただ、それが見えてくればくるほど今のうちにFF14をやっておかなきゃという気持ちになる。

クラベ :では、仮にFF14のストーリーをひとつ作ってくださいというお話が来ましたら、どうしますか?

坂口 :せっかく楽しめているので、関わりたくないです、いや本当に(きっぱり)。

クラベ :やっぱり遊ぶ側として楽しむものと、作る側として楽しむものと、分けて考えるものですか?

坂口 :知っちゃうと楽しめないですよね。知っているっていう前提になると、一緒に遊んでくれているユーザーたちとの関係も変わっちゃうじゃないですか。やっぱりある程度皆は上から目線で来て欲しい。「坂口さん、そこ間違ってますよね?」、「え、マジ?」みたいな。

クラベ :言ってくる方いるんですね。

坂口 :いますいます。そうじゃなきゃ勝てないので。僕も素直に謝ってますよ。「今の、すみません」とか言うと「はい、ドンマイドンマイ」って。

最近は零式に挑戦中という坂口氏。「炎鳥なやつを倒したので、『焼き鳥』を合成してみました(笑)」とのこと。

クラベ :でも、いつまでも生みの親として崇拝されたら輪に入れないところもありますし、近い距離になるのは嬉しいですよね。

坂口 :そう。最初は皆「ああ、坂口さんだ!」ってドキドキしてくれるんですけど、人間って不思議なもので、2週間も一緒に冒険するともうヒロノブ扱いですからね(笑)

都心 :では次の質問ですが、FF14はFFの長いシリーズにおいて、どのような役割や位置づけになっていると考えられますか?

坂口 :役割っていうのは特になくて、FFっていうのは『FINAL FANTASY Ⅱ』の段階で続編的に作るのは止めにしていて、システムもお話も世界観も変わるんだと定義づけしたので、全体に流れるテイストは一緒なんですけど、それぞれ独立しているっていう気持ちがある。最初に吉田さんとご飯を食べた時に、彼から「14作ってるんですけど、坂口さんのFFを僕はどこまで変えていいんでしょう?」という話になったから 「もう14はあなたのものだから僕は一切口出しするつもりもないし、自由にしていいよ」と返したら、それにある程度感動してくれたみたいで「じゃあ、僕ががっつりやります」と。

他のプレイヤーと一緒に、『クロノ・トリガー』のカエルの格好に。

クラベ :吉田さんからすると、坂口さんがこれだけハマってくれているのは嬉しいんじゃないでしょうか。

坂口 :そこはメールで何回かやりとりしました。14の感想を長文で送ったら、吉田さんから「ツイッター見てます。スタッフ全員坂口さんがやってくれていること自体感動しています」というのをいただいて。それは僕も嬉しいですね。だから本当に制作側として入りたくない。プレイヤーとして溌溂と楽しんでツイートしている姿が、開発チームの一番の力添えになるかなと。

「FF14の戦闘はダンス」

都心 :では、FF14のRPGとしてのメカニクス(討滅戦やダンジョン内のギミックなど)について特に感銘を受けたものについてお聞かせください。

坂口 :結局どこに重きを置くかですよね。力押しできちゃうとつまらないし、あんまりシビアなタイミングの攻撃ばかりだと、通信環境でラグが入る人にとっては難しい。色々試行錯誤があったと思うんです。でも現代は通信環境が皆良くなったというのはひとつ大きいのかなと思いました。だからギミックも皆でせーのでタイミングを測るものが多いじゃないですか。

それを躱しながら合間に殴り続けるという感じだから、人によっては皆でダンスを一緒に踊っているっていうのに近いのかなと。一人でも乱れると美しくないじゃないですか。それぞれ個々の役割があるにしても、ここの部分は日本人っぽいなと思いましたね。マスゲームっぽい。

僕自身が面白いって思うことにプラスして、今子どもたちのあいだでダンスって流行っているじゃないですか。僕の娘がダンスの先生っていうのもあるので観る機会が多いんですが、高校生や大学生が夢中でやってるじゃないですか。今の子どもたちのネットに触れながらダンスみたいなものにのめり込むっていうのは、僕らの時代とは違うんじゃないかなと。団体で美しく同期していることの楽しさ……それがFF14には結構入ってるんですよ。聞いたことはないんですけど、僕はそこが若い子にも受けている原因なのではないかと思ってる。

都心 :ダンスっていう着眼点はなかったですけど、確かにそうかもしれませんね。

坂口 :快感っていう点で同じなんですよ。綺麗に皆で動きを合わせてギミックをこなして倒したときと、綺麗に振付をこなして上手く踊れたっていう十人くらいのダンスと、多分一緒なんですよ。

クラベ :日本的な感覚だと「型」ってやつですかね。

FF14のビジュアルと音楽について

都心 :暁月のフィナーレは、他の拡張と比べてどのように感じましたか?

坂口 :僕の場合は4カ月とかで通してきてるんで、一本のお話として見えちゃうんですが……ただ今回は大団円というかね、エンディングとしてひとつの節目なんですけど「最後どこでオチを付けるのかな」と思った時に、月ってことで、FF4ネタじゃないですか。「え、でも月持ってきちゃったら、どうやってオチ付けるのかな」って思いました。それまでは大体察しがついたんだけど、今回はオチが見えないことが面白かったですね。「ふーん、そっち路線で来るのね、なるほどね、この子ね(笑)」ってプロの目線も入っちゃうんですけど。宇宙モノに広がるというのがね、何か大きな世界で起きたことが自分たちに跳ね返ってくるという設定は個人的に好きでしたね。

クラベ :そういった感じでFF14には過去のFFの要素が入ってくると思うんですけど、坂口さん自身が過去に作られたものが出てくることに対してどう感じますか?

坂口 :僕はとにかく懐かしさが来ちゃうのでね、メーガス三姉妹とかね。出てくるだけで小躍り(笑)「えー、素顔見せないで消えちゃうの」とは思ったけど(笑)。 もっと出てきてほしいですね。吉田さん自身がFFのテーマパークと言ってますけど、上手い具合にできてますね。

都心 :FF14のビジュアルや音楽についてはどう思われましたか?

坂口 :FF14はグラフィックも頑張ってますよね。最初プレイヤーに地面を這わせて、途中からパッと飛べるようになりますよね。すると見える景色が変わるじゃないですか。飛行機に乗るっていうよりは、ずっと東京で暮らしていて突然高層ビルに上った気分。「こんな街だったんだ!」みたいな。そこまでユーザーに我慢させるというのもゲームとして上手いですし。ゲームってやはり我慢のタイミングと解放するタイミングの繰り返しなところがあるじゃないですか。

あと、音楽が面白いなと思ったのは、今時のバンドっぽい曲が入ってるでしょ? 植松節とは違うというか。ギターとか、ボーカルとか入ってる。

クラベ :そこはFFのテーマパークであるという点とは異なるということでしょうか?

坂口 :普段はそうなんですけど、要所要所でメインテーマがかかったりするんですよ。余計感動しますね。ずっとFFの音楽じゃないっていうチョイスが良かったのかなと。長時間その世界にいるので……普段のプレイでは日常で僕らが聴いている音楽に近いものが流れていて、ストーリーの大事なポイントでFFのテーマ曲が入ってくるという。あれは上手い使い方ですね。最初僕はボーカルモノとか要らないんじゃないかと思ったんだけど、今じゃ日本に帰ったらあれをカラオケで歌おうとか思ってますからね(笑)

あと、最近はsakaGUCCIという洋服ブランドも立ち上げました。あれは自分の名前が入っちゃうので、普通にマーケットに流すと転売されちゃってせっかく上手い具合に回っている経済を壊すことになっちゃうので……でもそうすると僕はマーケットに出せないというハンディを背負っちゃうじゃないですか。どうしようかなと考えた結果、自分の名前が入るというのを逆手に取りました。目の前でBINDしてもらえばいいんだとわかったので、まだ一度も転売されてないです。そんな形で是非、IGNさん、本物のGUCCIにコラボを働きかけてください(笑)

sakaGUCCIブランドの侍衣装。

FF14についてのインタビューを通してわかったことは、坂口氏がFF14というMMORPGを心から愛し、しかしながらあくまで一人のユーザーに徹して、コミュニティを盛り上げようとしているということだった。

何十本ものRPGを製作してきた坂口氏を心の底から満足させ、その発展に寄与したいと思わせるだけの輝きがFF14にはある。

『暁月のフィナーレ』が発売され、FF14のストーリーは一旦の閉幕を見せた。しかしながら、新章の開幕は間近であり、フリートライアルの登録も再開している。坂口博信氏のように五ヶ月でクリアするのは至難の業かもしれないが、初心者が追い付くには絶好のタイミングだと思われる。是非とも産みの親が絶賛するFFのテーマパークの凄さを、本稿を読んでくださったあなたにも堪能していただきたい。

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